インタビュー

2026.03.17
遊びとキャンプが教えてくれたこと
〜理学療法士が見つけた生活に溶け込むリハビリとは〜
ブラーノには、スタッフやkikkaのママさんたちから「縁の下の力持ち」と頼りにされているお父さん的な存在がいます。
それは、理学療法士として勤務する久保田淳さん。
みんなからの呼び名は「じゅん先生」
白髭が生えたダンディーな容姿から想像もつかないほど、子どもとスタッフ思い。
活動報告の写真に映るじゅん先生は笑顔が素敵で、いつも子どもたちと一緒になって全力で楽しんでいるように見えます。
イベントの時には、よく差し入れをしてくれ、子どもの成長に涙する一面も。
ブラーノにとって、なくてはならない存在だというのは、言うまでもありません。
そんなインクルーシブキャンプの中心メンバーでもあるじゅん先生に、ブラーノでのキャンプについて、理学療法士(以下略称:PT)としてのご経験を伺いました。
ーーーじゅん先生はブラーノの立ち上げの時から勤めていらっしゃいますが、ブラーノに来ることになったきっかけを教えてください。
「古河市に多機能型デイサービスを立ち上げたいので、リハビリの人員を派遣してほしい」
ブラーノの代表である秋山さんから、当時私が勤める病院に派遣依頼があったのが始まりです。
ブラーノに派遣された当初は、病院での業務と並行し、非常勤として週に半日ほど働いていました。
病院とブラーノを行き来しているうちに、患者さんと関わる時間や、リハビリの内容に違いを感じるようになったんです。
病院では一人の患者さんと関わる時間が限られてしまい、リハビリを思うように進めることができませんでした。
ブラーノでは病院より何倍も長くて濃い時間を一緒に過ごすことができます。
子どもの機嫌や体調に合わせて、活動で楽しく過ごしている合間にリハビリを取り入れられるのではないか、と思いました。そこが大きな違いですね。
生活に寄り添う視点で関わりたい、という自分の思いをブラーノだったら実現できると考え、転職先にブラーノを選びました。
ブラーノを選んだというより、自分のやりたいことがブラーノにあった。その方が近いかもしれません。
でも、まだ試行錯誤しているところで…
昨年、60歳になりました。みんなと一緒に、笑いながらやりたいですね。

(▲スタッフも子どもたちも、じゅん先生が大好きです)
ーーーアウトドアがお好きだと伺いました。その中でも、じゅん先生がキャンプを始めたきっかけは何でしたか?また、最近のキャンプの楽しみ方を教えてください。
自分にはキャンプの原点があるんです。
実家が青森で、親戚のりんご農家の手伝いをよくしていて、収穫作業の合間の休憩時には、近くの湧水を汲み、小さな作業小屋で薪ストーブで湯を沸かしてお茶を入れたり、昼食時にはおにぎりを焼いたりしていました。
子どもながらに、その時間が最大の楽しみでした。
このデイキャンプもどきの経験が身近にあったこともあり、フィールドに出かけること自体が楽しかったんです。
独身時代はキャンプというより、野宿や車中泊を楽しんでいました。最低限の荷物を乗せて、行き当たりばったり。
カッコつけて「ちょっと海辺でコーヒーを飲んでくる」と言って、出かけていましたね。
PTになって働き始めた頃、勤務地が山奥の病院が多く、仕事をしながらアウトドアをするような感覚で、毎日が面白かったです。
ブラーノに来てからは、きちんと予定を立てて確認しながら準備するグループキャンプみたいなものを面白いと感じるようになりましたね。
準備はバタバタするけど、ワクワクするんです。
「これ、持っていこう」みたいな、それが一番楽しいんですよ。
ーーーこれまでのブラーノのキャンプで、印象的だったことはありますか?
子どもも大人も新たな発見がある、ということですね。
あるきょうだいが焚き火の炎を倒れそうになるほど前のめりで見ていたんです。その姿を見た親御さんが「こんなに興味があるんだね」と驚いていました。
親御さんによっては、危ないと止めようとするかもしれません。
でも、そのご家族はケガをしないギリギリまで経験させてくれました。
だからこそ、親御さんが子どもの新しい一面を知ることができたと思うんです。
ブラーノのキャンプを通して、その親子は今までと考え方が変わったのかもしれないと思い、私にとってとても嬉しい出来事でした。
白河高原に行った時も印象に残りました。
あるお子さんがカヌーに乗った時、つっぱっていた体の力がふっと抜けて、目をトロンとさせ、気持ちよさそうな表情を見せてくれたんです。
あの表情が今も忘れられません。身体も心も揺さぶられる体験ができることが、人の豊かさを育てるのだと実感しました。
だからもっとたくさんの子どもたちにカヌーに乗ってほしいですし、医療的ケアが必要な子どもたちに、いろいろな経験をしてもらいたいです。

(▲インクルーシブキャンプにて)
ーーー医療的ケアが必要な子どもたちと行うキャンプは、ハードルが高く感じます。じゅん先生はどのように感じていますか?
医療的ケアが必要な子とキャンプ場へ行くことは、大変なことがたくさんあって難しいと感じると思いますが、ブラーノのキャンプメンバーの中には医師や看護師、ボランティアのサポートスタッフがいます。
常にバイタル(=体温・呼吸・脈拍などの身体状態)を確認し、体調の変化があれば、すぐに対応ができます。
子どもたちのバイタル管理は大前提として、さらに大切にしているのは、“医療的ケアの必要な子どもたちが、キャンプで何をどこまで感じることができるか”ということですかね。
それは心地よさに限りません。
雨が降って大変だったことも、天気が良くてみんなで大騒ぎしたことも含めて、キャンプに行くことでいろいろな経験ができます。
いいことも悪いことも全て経験して、結果として、子どもたちに変化が出てくれたらありがたいです。
守るばかりでは、その先は見えません。
キャンプはPTの仕事と一緒で、経験を積むことで世界を広げる場所なんだと思います。
とはいえ、心配事は尽きないですよね。
だからこそ、ブラーノでキャンプをすることに、意義があると思うんです。

(▲いつも子どもたちに寄り添い、やさしく見守ってくれます)
ーーーキャンプとPT。共通点もあり、深いテーマだと感じました。何より子どもたちと過ごすじゅん先生はとても楽しそうです。PTとしての役割や大切にしていることはありますか?
小児の現場ではリハビリテーションとは言わず、「ハビリテーション=新しい機能を獲得し、社会に適応していく」といいます。
しかし、これが本当に難しいんです。
例えば、まだ歩いたことがなく、歩くことの意味すら知らない子にどう意欲を持たせ、活動として実践していくか。
ご家族とその子に関わる医師や看護師など、みんなと一緒に考え、試していくことが欠かせません。
医療側と患者さんの橋渡しが、私の役割だと思っています。
楽しい・嬉しいといったプラスの感情だけでなく、怖い・嫌だというマイナスの感情も、ときに成長のきっかけになります。
正直、正解がわからない世界です。リハビリでベストを尽くしたからといって、劇的に良くなることはあまりありません。
でも、その子にとってベターの中のさらにベターを探し続ける。それが私のスタンスです。
リハビリをする上でもそうですが、PTとして重要なことは、コミュニケーション力だと感じています。
患者さんそのものをよく見て、これがいい、こういう方法もある、と患者さんの強みを引き出しつつ、苦手なことを克服できるように導く。
患者さんを“やる気にさせる力”が、PTとしての腕の見せ所。
PTは体だけを対象にしているのではなく、心を支えて動かす存在です。
自分には、そのPTという仕事が合っていると思います。
ーーーお話を伺って
PTとしてブレることのない熱い思いを語ってくださったじゅん先生。
今回のお話で、ブラーノでのリハビリでもインクルーシブキャンプでも、自分が何をするかより子どもたちが何をしたいかを最優先に考えていることが伝わってきました。
じゅん先生は、かつての恩師に「手足を動かすだけがリハビリじゃねえ」という考えを嫌というほど教え込まれたそうです。
まさしく、手足も心も動かすことができる理学療法士だと感じるインタビューでした。
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