インタビュー

2026.02.05
“できない”ではなく“任せたい” 22歳になった次男が初めて引き受ける仕事
今回は開設当初からBuranoを利用している勇太さん(仮名・22歳)のお母さんにお話を伺いました。
障がいのある子どもと家族にとって、安心して過ごせる場所との出会いは生活そのものを大きく変えることがあります。
勇太さんを育てる日々には、不安や喜び、そして多くの支えもありました。Buranoとの出会いが、ご家族の関係にどんな変化をもたらしたのか。
これまでの歩みと、今感じている思いを語っていただきました。
ーご利用のお子さんの年齢や家族構成について教えてください。ー
次男の勇太は22歳で、頭蓋内出血による後遺症で四肢に麻痺が残っています。
現在は在宅で酸素を使用して生活しています。家族は夫と私、長男と次男(本人)の4人家族です。

△勇太さん2歳
ーBuranoを利用する前に心配なことはありましたか?ー
Buranoを利用し始めたのは勇太が15歳の時で、当時は預ける場所が足りておらず困っていたため、不安はほとんどなく期待の方が大きかったです。
3歳から普通の幼稚園に通って、その後は特別支援学校に入学しました。
普通の幼稚園に通うことができたのは、兄である長男が在園していた頃に、弟の障がいについて先生方にお話していたことが功を奏したのだと思います。
園長先生からは
「幼稚園はあくまでも教育の現場だから、何か伸びしろがあれば入園ができます」
と言われて不安もありましたが、何度か体験に行くと最初は全く笑わなかった次男が少しずつ笑うようになり、その様子を見た先生が「これは成長ですね」と受け取めてくださいました。
3歳の頃は、歩行や意思疎通が難しかったものの、医療的ケアがなく口から食事もとれていたため、先生方が臨機応変に対応してくださって、無事に卒園することができました。
理解のある先生方に巡り合えたことに感謝しています。

△勇太さん6歳
ー素晴らしい園と巡り合うことができたのですね。Buranoを利用する中で、印象に残っていることはありますか?ー
印象に残っていることは三つあります。
まず一つ目は昨年の夏に開催されたこころだま公演です。
劇場へ行くことが難しい子どもたちへ、プロによる本格的な舞台を届けている心魂プロジェクトさんが主催してくださいました。
私はもともとミュージカルを観ることが好きで、ずっと前から「次男にも本物を見せてあげたい」と思っていました。
そのため、ステージを目の前で観ることができて嬉しかったです。次男もテレビとは違う音の振動や伝わり方を感じて、まっすぐステージを見ていました。
心から感動して、忘れられないひとときを過ごすことができました。

△心魂(こころだま)さん歌のパフォーマンス
二つ目は次男を“ひとりの大人”として関わっていただけることです。
障がいがあると、大人として接してもらう機会がどうしても少なくなってしまいます。
Buranoでは依頼書をいただき、封筒づくりや誕生日を迎える子たちのバースデーカードづくりの仕事をさせてもらっています。スタッフの方と一緒に作業を進めているようです。
22歳になり、同年代の子たちは社会に出て働く年齢ですが、次男にはその機会がありませんでした。
だからこそ “仕事をする”という経験をさせてもらえていることが本当にありがたく、また嬉しくも感じています。
三つ目は、災害時にすぐに連絡をいただいたことです。
3年前に大きい地震があったとき、深夜にもかかわらず安否確認の連絡と「電源が足りない時は貸し出します」とご提案があり、安心感があったことが今も印象に残っています。
当時はまだ医療的ケアは必要なかったものの、現在は酸素を使用しているため、万が一停電が起きると非常に困ってしまいます。
気にかけてくれる存在がいると思うだけでとても心強いです。
ーたくさん印象に残った出来事があったのですね。Buranoに通ってから、ご家族の中で変化はありましたか?ー
土曜日に次男を預かっていただけるようになったことで、長男にも同じように時間をさけるようになりました。
長男は幼い頃から野球をしていて、小学生の頃は次男を連れて応援に行っていました。
しかし、長男が中学生になる頃には家で一緒に留守番する日が増え、応援には全く行けなくなっていました。
「高校ではせめて応援に行きたい」と思っていたちょうどその頃にBuranoの利用が始まり、休日の試合を観に行けるようになったことが嬉しかったです。
高校生で会話が減ってくる時期でしたが、試合があった日は「良かったね」「今日は惜しかったね」と、親子で共通の話題ができて会話が増えたことが嬉しく感じました。

△長男と次男
ーごきょうだいの関係はいかがですか?ー
長男は次男にとてもやさしく接してくれます。
長男が中学生になり進路を決める頃、第一志望校が家から遠く、次男は通っている特別支援学校を転校しなければならない状況でした。
そのことを特別支援学校の先生に相談したときに返ってきた言葉が、今も心に残っていて私の軸となっています。
それは「もし、お父さんとお母さんに万が一のことがあれば、勇太くんが頼れるのはお兄さんだけになります。
その時に、少しでも「弟のせいで俺の人生はダメになった」と思ってしまっていたら、お兄さんは弟のことを大切にできなくなってしまいます。
ですから、 優先できるタイミングではお兄さんを優先した方がいいですよ」
というお話でした。すごく腑に落ちました。
それからは、 2人同時に用事が出来てしまったときは、都合がつく範囲で長男を優先するようにしてきました。
そのおかげか、長男は次男に対してすごく優しく接してくれています。今は遠くに住んでいますが、帰ってくると「勇太〜」と寄っていき、話しかけています。
ー兄弟で仲がいいのは微笑ましいですね。
勇太さんの障害年金を寄付されると聞きました。なぜそうしようと思ったのでしょうか?ー
次男に限らず、障がいのある子どもたちは支援されることが多く、受け取る側であることが多いものです。
だからこそ「どういう形であれ、次男が社会に参加できる方法はないだろうか」と考えるようになりました。
障害年金を受け取ることは、ひとりの大人になったということでもあります。
次男は自分で動くことが難しいため、寄付という形で社会参加に繋がればいいなと思い、障害年金の一部を寄付することを決めました。
それでも追いつかないくらい、次男も私もたくさんの人に支えていただいているのですけれど。
「僕の力で少しでも役に立てればいいな」という、恩返しの想いが込められています。

△Buranoで調理実習をする勇太さん(20歳)
ースタッフに伝えたいことがあればお願いします。ー
設立当初からずっと今のように元気な雰囲気で、スタッフの方がみんな明るくて素敵な方が多いですよね。
頼りがいがあって、親と同じ目線に立って話を聞いてくれます。スタッフさんにお伝えしたいことがあるとすれば…もう、感謝しかありません。
次男へのお仕事の件でも、日々の小さな困りごとでも親身になって相談に乗ってくださいます。
何か困ったことが起きたとしても
「Buranoがあるから大丈夫」
「Buranoのスタッフさんに相談すれば、きっとなんとかなる」と思えます。
それくらい、大きな安心をいただいていて、存在そのものに支えられています。
ーお母様にとってBuranoとは?ー
これまで他の施設を利用したこともありますが、Buranoは特に常にいろいろなことに挑戦していく雰囲気があります。
きょうだいを大切にしたり、お母さんたちがお仕事を通して社会とつながれるようにしてくれたりと、新しい取り組みを次々に生み出しています。
そういった面では、パイオニア的な事業所だと感じています。
「次はどんな挑戦を見せてくれるんだろう」と、
いつもワクワクさせてくれる場所です。
3ヶ月に一度開催される茶話会では、年齢を問わずお母さんたちから色々な経験談を聞くことができて、感心したり共感したり楽しい時間を過ごしています。
私はこの何気ない雑談こそが大切だと思っていて、雑談の中から知ったことが私自身の学びになった経験もたくさんあります。
もし、Buranoをもっと知りたいという方がいらしたら、実際にその雰囲気を肌で感じてみてほしいです。
楽しくて温かい雰囲気がきっと伝わると思います。
きょうだいに同じように時間をさくことは、どの家庭でも悩みの種になりがちです。
医療的ケアがある場合はなおさらです。
Buranoに通い始めてから、休日に障がいのある勇太さんを預け、お兄さんとも同じように向き合う時間が持てるようになった、
と話すお母さんの表情は晴れ晴れとしていました。
利用者様を支えることは、同時にご家族の人生に関わることです。
「安心しました」「ありがとう」
という言葉を直接もらえることは、大きな励みになります。
Buranoではケアや保育だけでなく
「体験する」「役割をつくる」といった
関わりを通して、本人の尊厳と社会参加の形を育てています。
やりがいを感じながら、一人ひとりに丁寧に向き合える仲間を、
Buranoはいつでもお待ちしています。
*施設の見学や、利用に関する相談がしたいという方はこちらからお申込みください。
*Buranoでは現在、一緒に働く仲間も募集しています。
採用に関するご相談やお申し込みは、こちらのフォームからお気軽にどうぞ。




