kikka
2025.08.22
❝今、できること❞をやる! 家族の時間と自分の時間 どちらもかなえる働き方
「この状態で生まれてきて自発呼吸ができていることが奇跡なんです。長い目でみていきましょうね」
長女を出産した13年前、産院から救急搬送された総合病院の新生児科の医師から言われました。
出産直後に呼吸困難の症状が見られた長女。各科の医師が様々な検査をしてようやく原因らしきものが見つかり、手術が決まった頃。生後1週間ほどだったでしょうか。その頃に言われたのが冒頭の言葉です。
この言葉の受け止め方は人それぞれかもしれませんが、私はなんだか気持ちがスーっと軽くなりました。いったい今後どんな医療的ケアが必要になってくるのか、障害が出てくるのかなど実際のところはまったく想像もついていませんでしたが、長女と向き合っていく覚悟ができた第一歩でした。
こうしてスタートした長女との日々は、色々な人に助けられました。
GUU(新生児病棟)入院中には、ご両親もリフレッシュしてくださいねと笑顔で接してくださった病棟保育士さんや看護師さん。約半年後に退院してからは、長女のケアだけではなく母親の話し相手にもなってくれる訪問看護師さんや理学療法士さんのおかげで、ほっと一息つける時間を持つことができました。
また、入院中から自治体の保健師さんのアドバイスで小児のリハビリに特化した病院や療育施設があることを知り、早々に受診予約を取ることができ、0歳から通うことができました。リハビリや療育では、装具やマッサージのポイントを教えていただくことはもちろんのこと、長女の興味を引き出す工夫をたくさんしていただき、こうやって楽しめばいいのか!と発見の連続でした。
こんなふうに根気強く接してくださる先生たちとの出会いや様々なタイミングに恵まれ、長女は療育から公立幼稚園、公立小学校の特別支援学級に進み、今年、特別支援学校中学部に入学しました。ここからは、社会に出ていくための、新たなスタートです。
さて、私のkikkaとの出会いは、長女との生活を見守ってくれた一人である訪問看護師さんがきっかけでした。
股関節脱臼をしてしまう長女の排泄介助のために毎日小学校に待機していなくてはならず、大人の塗り絵や縫い物などで待機時間の暇つぶしをしていた私に、「パソコンがあれば仕事ができるそうですよ。お話聞いてみますか」と、看護師さんの受け持ちさんつながりでご紹介いただいたのがはじまりです。
実はあまり働く気がなかったわたし。
やりがいはあれどオーバーワークともいえる環境での仕事に疲弊した毎日を過ごし、妊娠を機に会社を辞められた!やったー!もうしばらく働きたくない!生まれたらもっと時間にゆとりのある仕事をするぞ!と思って出産したら、医療的ケアのある全介助が必要な重症心身障害児の育児が始まり、しばらくしてきょうだい児も産まれ・・・あっという間に一日が終わる毎日。長女の体調管理はさることながら、リハビリ通院や訪問看護、訪問リハビリが毎日のようにあり、幼稚園や学校の送迎&待機等、慌ただしい生活をしてきました。さらに夫は勤務時間が不規則で休日不定期、長期出張も多いため、子どもたちの様子はちゃんと見守りたいし、夫が休みの時は「家族で今しか過ごせない時間を楽しく過ごしたい」という気持ちが徐々に強くなり、いつしか「外で働くのは今じゃない」という気持ちになっていたのです。
とはいえ待機時間中の短時間だけ何かできたらいいな~とは思っていたので、「しっかりやる気は正直ない私ですがいいですか?」という軽い気持ちで始め、3年ほどが経ちました。
kikkaでいただく仕事では、なるほど~と勉強になることや、自分の親としてのあり方を考える場面が多々あります。また、こういった記事作成等、誰かに伝えることの難しさも感じながら取り組んでいます。
とは言いつつ今も家族中心の生活なのは変わりなく、お出かけや息抜きばかり。のんびりペースな私がkikkaの戦力になっているかは正直不明ですが、受け止めてくださるkikkaの環境に甘えながら続けているのが現状です。こうやって細々とですが続けさせていただくことができるのは、自分のやりたいこと、できることや希望する働き方を考慮していただけること。そして、代表の秋山さんはじめ、様々なバックグラウンドを持つメンバーの皆さんと相談しながら取り組めるからであり、kikkaやkikkaメンバーの懐の広さはとても心強いと感じています。
長女は思春期に入りはじめ、次女は10歳の壁にぶつかり、私はプレ更年期といわれる世代になりました。子供たちの成長だけではなく自分の心身の不調とも向き合わなくてはいけません。どこまで続けていけるかは私にもわかりませんが、自分のためだけに使える時間を持てているのはありがたいことです。
最近、障がいを持つ子どもをメディアでも見かけるようになっています。年々医療的ケア児を取り巻く制度や支援が変化して保護者が働ける環境も整えられるようになり、第一線で働いている人もいます。かっこいいな!頑張れ!と思うと同時に、障がい児もママも元気でキラキラしていなくてはいけないのかなと軽くプレッシャーを感じることもあります。しかしながら、私は自分のペースを見失わないように、そしてまた微力ながらkikkaの戦力となり自分自身の将来の生き方にもつながるよう、“今、できること”を大切にしていきたいと思っています。